儚い命よのぅ……
私が飼っているハムスターのうちの1匹に「うめ」というのがいる。その子は私やその友人たちに「うめたん」と呼ばれているが、オットはシャイなので(?)「たん」をつけて呼ばない。
このうめとの出会いは、とあるエキゾチックアニマルの展示会だった。ジャービル(スナネズミ)のブリーダーさんが出展していたブースに2匹の「里親募集」ハムスターがいた。そのうちの1匹だ。この子はいわるゆ「アメラニスティック・ジャンガリアン(メラニン欠乏ジャンガリアン)という種類らしく、ジャンガリアンにしては珍しく赤目である。体色はイエローなので、体だけ見たらプディングジャンガリアンだが、目が赤いので(あれあれ?)となる。
この子は少し変わった容姿をしているわけである。顔もちょっと面長で、ネズミっぽい。人間から見たらもしかしたら、「ハムスターにしてはあまり可愛くない」顔と言えるのかもしれない。しかしその目が、非常に美しい。毛の色も薄いので、余計にその紅が際立つのである。ちょっとハムスターにしては面長で「のーん」とした(?)顔も、その赤目によってなんだかすごく神秘的に見えるのだ。魅了された私は渋るオットを説得して、お持ち帰りと相成った。
目が赤いので、まぁメスだし、うめかな。そうやって適当に名前が付けられたうめたん。かなりのビビリ屋で、隅っこにいて、声がするとビクッとそちらを向く。触ろうとすると非常に素早く逃げる。持ち上げたら、ジジジジッと鳴く有様だ。
うめはすでに一歳くらいにはなっているとのことで、ハムスターでいえばそろそろ中年といったところ。話を聞くとこの子はどうもたらい回しに遭っているようだったし、余生を楽しんでもらおうとうちに連れてきた。お別れも他の子より早く来るだろうという覚悟もある。しかも、しばらく見ていて気がついたが、なんとなく直感で「この子は体が強くなさそうだ」と思った。体が強くないからこそ、これだけビクビクしているんじゃないかと。また、その特徴的な容姿も、あまり日本ではおおっぴらに流通していないタイプなので、もしかしたらブリーダーさんが出品しないような、遺伝的脆弱性のある個体なのではないかと。ジャンガリアンに本来、赤目は存在しないと言われている。なんらかの突然変異遺伝子を持っているのだろう。だとすれば、近親交配の結果かもしれないのだ。
などとぐるぐる考えていたが、お迎えして約1ヶ月したところで、(うちで一番の高齢だし、健康診断をば……)と、軟便ハムのもちの診察のついでにと、病院に連れて行った。
そしたら……私はああ連れてきてよかったなぁと思った。手慣れている獣医さんが持っても、うめは「ジジジジッ!ジジジジッ!」と鳴いていた。しばらくうめをまじまじと見て、先生は言った。「あ、手になんか出来ていますね」。
なんとうめの左手に、めちゃくちゃ小さい血豆のような、赤いできものができていたのだ。これは腫瘍の可能性もあるとのことだった。あまり手に持たせてくれないので、私はうめの病変に気がついていなかった。いや、まだ一ミリに満たないほどの大きさなので、おとなしい子でも、気づいていたかはわからないが。
ハムスターが腫瘍ができやすい動物であることは、愛好家ならば誰もが知る事実だ。そして、悪性であれば小さいハムスターの手術は難しいので、だいたいが緩和ケアしかないということ。まぁ、まだうめのおできが悪性かは、分からないのだが、ハムスターの一般的特徴と、うめに対して感じていた「病弱そうだ」という直感から、私はまぁ十中八九悪性腫瘍だろうなぁと思っている。
うめたん、いま何歳かわからないのだが、もし1歳ちょっとであればちょっと腫瘍は早いなぁ。案外腫瘍ができても長いこと生きる場合もあるそうだが……うーん、これからはうめのことをもっと気にかけ、うめを慣らしていこうと思った。おそらくあまり長くないだろう余生を、よかったなぁと思って生きて欲しい。
儚い命よのう。と思ったのでした。
もちろんうめは、まだまだ元気ですけどね?